なぜオーストラリアでワーホリすることにしたのか

「オーストラリアでワーホリ」という選択を最近、耳にする機会が増えた。

円安が進むなか、テレビや新聞などで「国外で外貨を稼ぐことで貯金する若者」という見出しが踊るのを見たことがある人も少なくないはずだ。

たしかに「金を稼ぐ」という意味では、最低時給が2000円を超えるオーストラリアのワーホリは効率的である。

ただ、「ワーホリで稼ぐ」は理由の一つでしかない

事実、「本当に金にしか興味がない日本人」に、少なくとも私はオーストラリアで出会ったことがない

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海外で暮らすのが夢だった

私が30歳で日本を出て、オーストラリアで暮らそうと決めたのは、元々海外で暮らすことが一つの夢だったからだ。

海外に一度も行ったことがない父親と、シンガポールに一度旅行しただけの母親のもとで、なぜ海外への憧れを抱くようになったのかについては、こちらで詳述している。


「海外に住んでみたい」という願望はずっと持ち続けていたが、社会人になれば、仕事を急に放り出すこともなかなかできない

その願望は、コーヒーを飲む時や、銭湯に浸かるふとした瞬間にたまにひょっこりと思い出しては、日々の目の前の仕事に忙殺されて上塗りされ、見えなくなるのを繰り返していた。

そうやって日々に埋没して、元から夢なんてなかったように処理することは簡単と言えば簡単だが、結論から言えば、私は社会人9年目のタイミングで、日本の外に飛び出した

Youはどうしてオーストラリアへ?

初めての海外ぐらしでオーストラリアを選んだのには5つのワケがある。

  1. アジア太平洋地域の親日国
  2. 東京とシドニーは時差が1時間しかない
  3. 英語が公用語である
  4. 東京より治安が良い
  5. 30年間ずっと経済成長している

私にとって、どれ一つとっても欠かすことができない理由である。

❶アジア太平洋地域の親日国

オーストラリアは日本から7〜11時間で着く、かなり近い国である。

オーストラリアの主な旅行先はシドニーやケアンズで、東京・シドニー間の往復チケットは10〜15万円ほどと、アメリカやカナダと比べればリーズナブル。東京からケアンズまでは7〜10万円ほどで済む。

また、同じ太平洋アジア地域に位置する国として、文化的なつながりも多く、オーストラリアは人口あたりの日本語学習者が世界トップという稀有な国である。

日系サービスも増加し続けており、日本食レストランだけで、全土に2000店以上、シドニーには700店以上ある

また、ユニクロ、無印良品、ダイソー、やよい軒、紀伊国屋書店、NTT、サッポロビール、サントリー、アサヒビール、ヤクルトなど日系企業や商品が受け入れられているほか、シドニーのど真ん中にチーズケーキのルタオが進出するなど、「日本ブランド」の拡大はとどまるところを知らない勢いである。

「日本に馴染み深い社会」であるという意味で、「海外生活はじめの一歩」にはぴったりの国なのである。

❷東京とシドニーは時差が1時間しかない

サマータイムを除き、東京とシドニーの時差が1時間しかないことも、日本企業とリモートワークをする私にとって非常にありがたいポイントである。

私は日本を出る際に、会社をいったん辞める形をとった。

より正確には、正社員を退職し、フリーランスに切り替えた上で、同じ会社と業務委託契約を結ぶことにした

私は原稿を書く仕事を主な生業としているが、インターネット環境とパソコンさえあれば、特に困ることはない

時々、日本の会社とミーティングをする際に、ビデオ通話で顔を出してお話しすることがあるが、時差が1時間しかないことは、そうした意味で非常に便利なのだ。

何度か東京とつないでミーティングしたが、物理的な距離を感じたことはない

❸英語が公用語である

世界中のウェブサイトのうち、英語のコンテンツは55.0%なのに対して、日本語のコンテンツは3.7%(2023年5月23日現在、調査サービスW3Techsによる)。

つまり、英語でやり取りされる情報は、日本語の約15倍にも上るのだ。

ただし、この数字は調査によってばらつきがあり、別の調査によれば英語が占める割合は25.3%(日本語は3%)というデータもある。

いずれにせよ共通するのは、英語が世界のウェブで最も頻繁に使われている言語であり、日本語とは雲泥の差があるということである。

このことは、英語を読めるだけで、日本語しか読めない場合と比べて10倍前後ものコンテンツにアクセスできるということを意味していて、「情報弱者」にならないためには、英語は必須なのである。

はじめ私はキオスクで水を買うのにも「英語でなんといえば……?」と不安になるほど英語がおぼつかないレベルだったが、その点、公用語が英語であるオーストラリアは、英語を身につけるのに最適な場所だ。

❹東京より治安が良い

海外から移民を受け入れることによって経済成長を遂げてきたオーストラリア。

「移民」と聞くと「治安の悪さ」を懸念する声が聞こえてきそうだが、実際には、シドニーの治安は東京の治安より良いというデータがある

世界的調査機関のザ・エコノミスト・インテリジェンス・ユニット (EIU)がNEC協賛の下、60の主要都市圏を対象とした『Safe Cities Index 2021』(世界の都市安全性指数ランキング)によると、治安の総合スコアのトップ10は次の通り。

rankcity
1コペンハーゲン
2トロント
3シンガポール
4シドニー
5東京
6アムステルダム
7ウェリントン
=8香港
=8メルボルン
10ストックホルム
Safe Cities Index 2021

ちなみに、私はそもそも「移民=トラブルメーカー」という考え方そのものが偏見に根差していると考えている。

オーストラリアの移民は基本的には「専門知識・技能をもつ人」が選抜されており、高等教育や相応のスキルを有した能力の高い人材が集まっている

留学生の場合も、国内学生の数倍の学費を支払わなければならない仕組みになっており、裕福な家庭で生まれ育った場合でなければアクセスすることが難しい

教育された「良識人」が集まるという意味で、「地元生まれのローカルよりちゃんとしている」という声も聞くほどである。

その真偽はわからないが、移民が即座に治安の悪化を招くとはいえないことは確かである。

そうでなければ、海外で生まれた移民が人口の約3割を占めるこの国で、日本並みの治安の良さをマークしている理由を説明することができない

❺30年間ずっと経済成長している

日本が「失われた30年」の閉塞感にあえぐ中、オーストラリアはリーマン・ショック(2008年)の世界同時不況にさえもうまく対処し、経済成長を続けてきた

富の源泉は労働人口の増加であり、供給源は世界各国である。

世界中から集まったエリートたちが経済を牽引しており、私と同年代のオージーが誰一人として「この国の経済は今後、悪くなると思う」とは答えなかったことに新鮮な驚きを覚えたものだ。

つまり、日本では決して感じなかった「未来の社会への希望」を感じられる国であり、社会全体に明るく余裕のある空気が漂っている

それはまさに「イケてる国はどんなものか見てみたい」という、私の素朴な海外への憧れの源泉をなすものだった。

ワーホリを選んだのは「ハードルの低さ」

オーストラリアへ行くにあたり「ワーキング・ホリデー」を選んだのは、私にとってすぐに始められる簡単な制度だったからだ。

そもそもワーホリとは?

そもそも、この制度は、30歳以下の人に対して、休暇目的の滞在と生活費をまかなうための労働を許可し、両国の理解を深めることが目的とされている。

ワーキング・ホリデー制度とは
二国・地域間の取決め等に基づき、各々が、相手国・地域の青少年に対し、休暇目的の入国及び滞在期間中における旅行・滞在資金を補うための付随的な就労を認める制度です。
各々の国・地域が、その文化や一般的な生活様式を理解する機会を相手国・地域の青少年に対して提供し、二国・地域間の相互理解を深めることを趣旨とします。
(外務省HPより)

ちなみに、ワーホリは世界中にある制度だが、日本では1980年にオーストラリアとの間で初めてスタート

2023年8月時点で、29カ国・地域に対象が広がっている

nation / region commencement yearacceptance quota limit
1オーストラリア1980
2ニュージーランド1985
3カナダ19866,500
4韓国199910,000
5フランス20001,800
6ドイツ2000
7英国20016,000
8アイルランド2007800
9デンマーク2007
10台湾200910,000
11香港20101,500
12ノルウェー2013
13ポルトガル2015
14ポーランド2015500
15スロバキア2016400
16オーストリア2016200
17ハンガリー2017200
18スペイン2017500
19アルゼンチン2017日から亜:200
亜から日:400
20チリ2018200
21アイスランド201830
22チェコ2018400
23リトアニア2019100
24スウェーデン2020
25エストニア2020日からエストニア:無
エストニアから日:100
26オランダ2020200
27ウルグアイ2023100
28フィンランド2023日からフィンランド:無
フィンランドから日:200
29ラトビア2023100
外務省による

ビザ発給のハードルがかなり低い

外国で就労できるビザを得るには、現地企業からスポンサーを得る必要があったり、語学試験で高得点をマークしなければならなかったりと、大変な労力がいるケースが多い

留学にしても、入学試験を受けたり、多額の授業料を工面したりする必要があるケースがほとんどだ。

ところが、ワーホリの場合はそうしたケースと比べて準備することはほとんどないと言っていい。

唯一制限があるとすれば、申請時に18歳以上30歳以下でなければならないということだ。

実際、ビザが発給されるための条件は、以下の通りである。

  • 相手国・地域に居住する相手国・地域の国民・住民であること
  • 一定期間、相手国・地域において主として休暇を過ごす意図があること
  • ビザ申請時の年齢が18歳以上30歳以下であること
    オーストラリア、カナダ、韓国及びアイルランドとの間では18歳以上25歳以下だが、各々の政府当局が認める場合は30歳以下まで申請可能。
    また、アイスランドとの間では18歳以上26歳以下の方が申請可能
  • 子どもや被扶養者を同伴しないこと
  • 有効な旅券と帰りの切符(又は切符を購入するための資金)を持っていること
  • 滞在の当初の期間に生計を維持するために必要な資金を持っていること
  • 健康であること
  • 以前にワーキング・ホリデー査証を発給されたことがないこと

「ギリホリ」で駆け込みセーフ

私の場合は、31歳というタイムリミットが2〜3ヶ月後に迫る中でビザの申請準備をスタートした。

初めは何をすれば良いかよくわからなかったが、自分なりに調べてみたら案外要件が緩く、「これなら自分でもすぐにいけそうじゃん」と思ったのだ。

「もし滞在を延長したくなったらその時に考えれば良いや」という算段で、まずは実際に行動に移すことを最優先に考えた

申請にあたっては、自力でも差し支えないはずだが、時間を節約したかった私は、エージェント(有料)を利用することにした

お金を払うことになったが、スムーズにビザが得られたことに加え、渡航前に不安な点を解消できたため、結果的にはとても満足している

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