ニッポンに眠る金脈

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ニッポンには、ほんとうに将来性がないのか?

日本の未来について考えたとき、明るいと感じるだろうか、それとも、暗いと感じるだろうか。

日本には将来性がない。少子高齢化が進む上に資源もないし、天災だらけ。政治家はあんなだし、増税の一途。産業も衰退する一方だ。

こういう悲観的な言説を耳にすることは少なくない。

確かに、”国力低下”は圧倒的なデータに裏付けられた面もある。

一方で、データといえば、国のイメージをはかるブランド力の世界的調査(2023年11月)で、日本が第1位であることは、あまり知られていない。

約束の地、ニッポン

シドニーで出会った数多の人々は、国籍も言語も肌の色もみな違うが、ひとつだけ共通していることがあるとすれば、決まって

日本に行きたい!

と言うことである。

日本で暮らしていた時には自覚がなかったが、海外で暮らす人々から見れば、日本は「死ぬまでに絶対に訪れたい国」というキラ星のような“約束の地”と認識されている。

くだんのブランド力調査では、国のイメージに関する共通質問の一つとして「性格」と「評判」を問うている。

それによると、ニッポンは、

▽「独創的だと思う国」で1位
▽「仕事などで優秀な能力がある」で2位(※1位はドイツ)
▽「この国の製品を信頼する」で1位
▽「この場所は他のどの場所とも似ていない」で1位


という結果を叩き出した。

要するに、日本は「ユニークで信頼できる有能な国」というイメージを持たれている。

これを過大評価と取るか、身の程に合った評価と取るかは別として、

日本は電車が3分遅れただけで謝罪するんでしょ?

とか

日本はいつも斬新だよね。割れた器を修復する金継ぎをみて感動した

とか、そのイメージを補完するような話題をシェアしてくる外国人がかなり多いことは紛れもない事実である。

観光資源にあふれるニッポン

そこで、よその人を惹きつける「観光資源」とはなにか?を改めて考えてみる。

もちろん例外はあるものの、一般的には、

①気候・風土
②文化
③食


のどれかに当てはまる。

極東に位置する火山列島の日本にはそこらじゅうに温泉が湧き、四季の草木が萌えいずる。

自然を土台とした文化や、旬と産地を大切にした食も言うに及ばない。

たとえば筆者がシドニーで暮らしたとき、ミートパイとポテトフライを紹介されて「これがオーストラリアの懐かしい食文化」と語る現地の人を見たが、正直なところ、どことなく深みが足りないように感じてしまったのは、私が作り手の哲学と風土の特徴が詰まった日本食で育ったからに他ならない。

そうして「日本は観光資源に溢れた国である」という言い古された言説を、ちゃんと正座して見つめ直した方が良いのかもしれないと思い始めたのは、日本の外に出て私が得た大切な実感のひとつである。

トラベル産業は、将来、クルマを抜く

さて、日本には資源がないから将来性がないという。

確かに石油は湧かないかもしれないが、「カネを稼ぐ糧」という意味での資源なら、誘客は立派な資源であると言えるのではないか。

ここに、あるデータがある。

戦後の日本経済を支えてきた最大の背骨は自動車産業であるが、その年間輸出額が12兆円なのに対し、コロナ前の2019年に外国人が国内で消費したお金は5兆円。
政府が掲げる2030年のインバウンド目標は6000万人で、それが達成された場合の年間消費額は15兆円である。

要するに、いまの日本で最大の産業であるクルマを余裕で超える規模なのである。

フランスは年間9000万人、スペインは年間8500万人、トルコは5000万人のインバウンドを呼び込んでおり(いずれも2019年)、非現実的な数字とも言い切れない。

日本は戦後、クルマ産業を中心にテクノロジー戦略を続けてきたが、そろそろ本気で観光資源を産業のコメとして育てることを国策のど真ん中に据えても良いのではないか。
世界から日本へお金を流し込むチャンスは目の前に広がっている。

お客さんの質を保つことの重要性

ただし、かつて工業がイタイイタイ病などの公害を招いたように、大挙する観光客が地域にカネだけでなく環境悪化の公害をもたらすリスクは十分にある。

それをできる限り軽減するには、ある適度、客を選ぶ必要がある

つまり、日本の個性的な文化を「食い散らかす(消費する)」ために来る人ではなく、「味わう(鑑賞する)」ために来る人にこそ響くブランディングが求められる。

もちろん世界を見渡せば客単価が安い国も高い国もあって良く、ここでどちらが優れているという話をしたいわけではない。

ただ、日本としては、観光客の数ばかりを追求するのではなく、そのかわりに客単価を高くすることで帳尻を合わせるポテンシャルが十分にあると、私は信じている。

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